102回 ターゲットは顧客です 

★「働き」と「動き」★
京セラの稲盛さんは、すばらしい人生をおくるための人生方程式を「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」としています。
そして『考え方』について、いくら「熱意」と「能力」があっても『考え方』が「マイナス」であればすべてが「マイナス」になるのだとしています。

本題とは外れるのですが、稲盛さんの「考え方」は「人間として何が正しいのか」「人間は何のために生きるのか」を真正面から向かい合い問いかけたことから生まれたとしています。

トヨタでは、問題が発生したら事象の根本原因(真因)を明らかにするため「WHY(なぜ)」を5回はくりかえせとしています。

「トヨタ生産方式」の完成の立役者である大野耐一氏は、すべての作業の中身を2つに分類しました。それは「付加価値(成果)を生み出す作業(活動)」となんら付加価値を生み出さない作業で、前者を『働き』と呼び後者を「動き」と呼びました。

多くの起業家の動機は「儲けたい」や「夢を適えたい」ということでしょう。この「思い」自体は至極とうぜんのことで「熱意」が高ければ高いほどやり通すための「活力」を生じさせます。
しかし、大野耐一氏の言うところの付加価値を生まない「動き」をしているのであれば、その結果は自ずから明らかでしょう。

★『効用』こそがすべて★
『顧客』が求めるものはただ一つで、それは「欲求が適えられる」ことであって自身が「適えられる」とそのように判断したら「対価」を支払います。つまり「満足」「感動」が得られるところの『効用』への「期待」が大きければ大きいほどその可能性が高まります。

企業の『働き』は「顧客の欲求」を知って、その『欲求』に「満足」「感動」をもたらす『効用』を創造して提供することです。
これが『仕事』というもので、そうでないものは「ムダ事」であるので、経営者に求められるのは『効用』を生む『仕事』が実現できるように「条件を整え支援する」ことです。

『効用』とは分かりにくい概念かも知れませんが「欲求を満たす『効用』」のことで、顧客が商品・サービスに対価を支払うのは「形態」「機能」ではなく『効用』があるからです。

5つ星のザ・リッツカールトンの『効用』は「ユニークで思い出に残るパーソナルな体験」を提供することで。
そのような『効用』を実現させるために、サービスの3ステップ

1.あたたかい、心からのごあいさつを。

2.お客様をお名前でお呼びします。一人一人のお客様のニーズを先読みし、おこたえします。

3.感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。お客様のお名前をそえます。」を行うのです。

『効用』の特徴は、現実的に「そこでそうであるという『現象』」です。
送り手がどのように思おうが、どのように努力しようが「現象」が起こらなければ『効用』ではないのです。
『効用』は『欲求(感情)』を基盤にしており、それ故に「非合理」であったり「非論理的」な側面をも多く持つのです。企業活動において、いかに「論理的で勤勉」であろうと「現象」の起こらないものは無価値で、たまたまの「思い付き」であっても「現象」が起るものには「価値」があると言えます。
ややこしい言い方になりますが、受け手がそう思えば起こり、逆にそう思わなくなれば消えてしまいます。

一昔前までは「論理的で勤勉」だけで、充分以上に事が足りていました。「モノ」が少ない時代においては、作ればor造れば売れました。
『効用』は自明のこととして見えていたので「論理的」に効率化して「勤勉」に生産性を上げるだけで「顧客」の「基本欲求」を満たしかつ利益を獲得することできました。

ところがモノが余り、情報化やグローバル化や技術革新などの未だかってない異質でかつ激しい変化の波が襲ってくると「ガラ携」の性能をいくら向上させても「スマフォ」の異質な『効用』に勝てるはずはありません。
一見不可能と思える『効用』を「思い付き」、それを「論理的に勤勉」に実現させようとしなければ「顧客」の「未知なる欲求」を満足させることなどできない社会に突入しているのです。
IT情報化は、既存・異質にかかわらず『効用』のあり方を変えます。
初期の「アマゾン」の提供した『効用』は「あなたの手元に『おさがしの本』をネット通販でお届けする。」ことでした。
今は「ありとあらゆるモノをお届けする。」に進化していますが。「グーグル」は「限りなく多くの情報」を提供しています。
「ユー・チューブ」は「限りなく多くの映像」を提供しています。

ところで、一般消費者にとっての『効用』レベルが最高である「グーグル」「ユー・チューブ」は頻繁に活用しても、最もありがたい「0円」です。
IT産業での「0円」つながりで言うならば「ヤフー」「ツィッター」「フェースブック」さらに「ライン」「インスタグラム」も、活用することに皆が「満足」しているにもかかわらず「0円」です。

2017年度の世界の億万長者のうち5位マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック創業者)12位ラリー・ペイジ13位サーゲイ・ブリン(2氏
はどちらもグーグルの創業者)で、3氏はともにIT「0円」企業の創業者です。

この2つのIT「0円」企業の『効用』一般生活者が活用するについては無代ですが「知ってもらわなければ事業ができない」物販業者にとってはこの『効用』の欠如は致命的で、IT「0円」企業創業者を一躍世界のトップクラス億万長者にのし上げてしまうのです。
「楽天」「ヤフー・ショッピング」「アマゾン」などの「電子商店街」も、この「「知ってもら効用」を提供することで成り立っています。
製造業者、物販業者が「知ってもらう」ための『効用』のために、こぞって対価を支払います。

IT「0円」企業のビジネス・モデルは一見革新的に見えますが、民放テレビの延長線上にあるものでツールとしてインターネットを活用したものです。言われてみれば、誰もが思いつくような「思い付き」です。しかし、後付すれば「当たり前」であるものこそが大きく開花します。
「0円効用」企業のビジネス・モデルが、次々に圧倒的に普及しています。

『欲求』を満たす『効用』を創る機会は無限にあり、それと同じように強い思いから創られる事業にも無限の機会があります。
『効用』こそが事業を行うについての出発点であり、根本的な基本概念です。

時代に即した『効用』の発明や「付加効用」の発見で、他企業との差別化をはかり先行できるならば「世界の億万長者」への参加も、適えられない夢ではないでしょう。

抽象的な言い回しでこの回を閉じるのですが、勝者が持たなければならないのは「智恵」「勇気」と「見識」ということになるのでしょう。
と同時に「軽薄」や「強欲」や「自惚れ」といった正反対の要素も「運」さえあれば一時的にしてもチャレンジする人を勝者に引き上げることになるでしょう。