101回 マーケティング」について

★「現実、欲求、価値」からスタート★|
この回からは、経営(マネジメント)について基本から一緒に考えて行きたいと思います。

これは私の定義ですが、事業には2つの活動があると理解しています。
一つは「仕事」でもう一つは「投機」で、どちらも利益を得ようとしますがその方向性はまったく異なります。※ここでは、金融投機や不動産投機等は一応除外します。
その違いの大きな要素は「現実」をより多く基盤にするかしないか、より多く「運」を当てにするかどうかに関わっています。「投機」は、不可知なこと対して行動を起こそうとするもので「現実」よりもより多く「運」に依存します。

「マーケティング」と言う用語があります。ドラッガー曰く「マーケティングは顧客からスタートする。『現実、欲求、価値』からスタートする。顧客は何を買いたいか』を問い『顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである』とする。」とあります。そして、マーケティングが目指すものは『顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。』に至ります。ここで言いたいことは「おのずから売れるようにすれば『売れる』」ということで、事業においての『投機』の位置づけを確かめたかったからです。と言うと「『投機』で儲けることもある。」という声と「『投機(リスク)』を負わなくては『機会(チャンス)』を得ることもない。」という意見が出てきます。

この意見に対しては、先の「『投機』で儲けることもある。」が一番の「難敵」で「楽して儲ける」と必ず「挫折」の罠が仕掛けられます。
「『投機(リスク)』を負わなくては『機会(チャンス)』を得ることもない」は経営の基本ですが、2つの前提原則を満たしている場合においてある
べき経営に求められる「基本姿勢」です。先の「儲けることもある。」これが何故怖いか、それは顧客の「現実、欲求、価値」からスタートしないからです。こんなことで儲けてしまうと、よほどの「織田信長」のような抑制のある人以外は「顧客の」から遊離して「幻想」のなかで活動してやがては後発者に追い越されて顧客に飽きられて一発屋で終ります。

さらにまた堅実過ぎる2代目後継者などのおいては、ラッキーは続くものとして投機(リスク)を恐れるあまり、新たな機会(チャンス)を得ずして時代の変化が激しいなかにおいては凋んでしまうのもアッという間の出来事にもなることも起こり得ます。

後のことの「2つの前提原則」について話をすすめます。
まず第一原則は『マーケティング』つまり顧客の「現実、欲求、価値」に焦点が合っているかどうかで、ここを起点にしなければ成果は定まりません。
第二原則は『イノベーション(革新)』の意思の問題であり、顧客により良い「効用(商品・サービス)」を実現するために、不透明でありがちな顧客の「現実、欲求、価値」に添うために『投機(リスク)』を負わなけれならないとするものです。

ここであらためて考えていただきたいのですが、それは簡単な論理で「対価を支払うのは誰か。」で全ての起点はここに求められます。
顧客は、企業が『マーケティング』とよりよい『未来マーケティング』つまり『イノベーション(革新)』を実現させている時においてのみ『対価』を支払ってくれる可能性が生れるという現実です。

このことが企業の『使命(ミッション)』であって、「存続」が保証されて「成長」が適えられて、そしてそのことを通して『生活の糧」が得られる可能性が生れます。

ここで、また奥歯に物が挟まった言い方をしますが、ミッションさえ果たせば利益さらに言えば余剰のお金が確保できるかと言えば、事はさほどに都合よくいかないので『可能性』が生まれると言いました。

また理屈っぽく論理を重ねますが『最少のインプット(経営資源)で最大のアウトプット(成果)を生む』術の『マネジマント』が必要になります。
今まで100回に渡ってバラバラに思いつくままに述べさせていただきましたが、101回からはもっと系統立てて、率直にできる限り吟味して述べさせていただきたいと思います。
※ここで述べて行く私の『動機』を述べます。
余りにも多くの有意な経営者や起業者が、迷いの袋小路に入り込んで「持てる才能と活力」を浪費させまた逆機能させることを目の当たりにして惜しむがためです。知識不足は十分に認識しております。けれど「せずにはおれない。」という思いで行います。

ここでは、結構「礼を失したこと」も述べます。文責については、皆様に役立つようにと浅井氏に依頼されて書いているこの私にあることを申し上げます。

★従業員へのマーケティング★
『マーケティング』においては、大きく分けて2つのサイトがあります。
一つは事業活動の目的である『顧客』で、もう一つはその顧客の満足を実現させる主たる担い手である『従業員』です。さらに言うと「顧客満足」という『成果』をむかって、より良く生産的に創造的に実現させようとするのが『マネジメント』の考え方であり活動です。ただし『マネジメント』を実行においては、顧客個々の「欲求・現実・価値」がそれぞれ異なるので、そのあり様については一様ではありません。

この回では『マーケティング』のあり様を理解するために、起点である起業家の「欲求・現実・価値」を探りながら、「顧客」と「従業員」という2つのサイトの「欲求・現実・価値」にどのようにアプローチするのかを観照して探って行きたいと思います。

探るについては、異なるアウトプット(成果)において超優良である2社を取り上げてそのあり様の本質と多様さを確かめて行きたいと思います。
この2社とは「トヨタ自動車」とあまりよく知られていないが一部の人たちの話題にのぼるBtoBの企業である「キーエンス」です。

<トヨタ自動車>
最高の「売上高」と「利益」を計上しています。
創業者は豊田喜一郎氏で、日本経済の柱とする産業を興したいとはじめた企業であり、ターゲットとする『顧客』は不特定大多数です。
そこでとられる戦略は『全面戦争』戦略で、勝ち抜くために一切のムダを排してかつ不可能を可能にしようとするもので、人材すべての才能・能力をムダにすることなく最高度に活かそうとする『総力戦』となります。

◎顧客に対する『マーケティング』
どんな「欲求・現実・価値」に焦点を絞るかということになりますが、不特定大多数のボリューム・ゾーンをターゲットとする場合、それは「安全、安心、値ごろ、燃費、走行性、使いやすさ、居住性」と総花的となりバランスよく一番にならなければならず、すべての要件を無駄なく技術的優位性もって実現されなければなりません。

◎従業員に対する『マーケティング』
少し一般的な予備知識として、2つの「欲求学説」に精通ください。
1.マズローの欲求5段階説:人間は低次の欲求が満たされると、より高次の欲求を求める。
2.ハーズバークの動機付け衛生理論:不満の原因となる欲求とやる気を引き起こす欲求は相異なる。
ただ、少し断っておかなければならないのは、生ものである現実を相手にする場合は基本の考え方のバックボーンを知ることは必要ですが、その展開については人間は複雑系なので「熱意」「勇気」「知恵」「根気強さ」「愛情」といった「価値観」や「哲学」といった要素を抜きにして行うことはできないことを知っておくことが基本です。

トヨタの場合は大規模の活力を引き出す必要があり、多くの人材の参画が必要で、多くのその地域の人たちの採用が必要となります。
そのために愛知県という土地柄を抜きにしての人材獲得・活用を行うことは考えられません。

地域を生活基盤にする人たちの欲求は「堅実」「安定」であり「雇用の保証」「安定した報酬」「コミュニティーへの帰属」という気風があり、従業員に対する『マーケティング』つまり「インセンティブ(誘因)」はそれに順応したものとなります。

「コミュニティ」を守ろうとする気風の土地柄において、戦後のトヨタの存亡の危機と社員の一部の解雇という悪夢から強力な共同体意識が生れました。グローバルな競争のなかで自身の貢献で「世界一番」でならなければ、それが達成できないという「思い」が皮膚感覚ともなって行きました。

経営のあり方は、非常識とも思える革新的なアイディアを賞賛し、総力戦を存続のために戦う仲間と相携えて考え抜き実行することを支援することになります。
<キーエンス>
最高の収益率と報酬(一人当たり)を計上しています。
創業者が滝崎武光氏が「倒産しない経営」を考え抜いて築き上げた企業で、ニッチ(すき間)な顧客に特化して自社の「強み」要素を究極にまで構築して他の企業が参入できない状況をつくる「戦わない」戦略が取られます。
そのマーケティングを特色を一言で言うと『だれも提供していないあなた仕様の役立つものを、あなたに提供します。」となります。「キーエンス」の状況は、顧客が一般消費者でないのでその姿が見えにくくかなりの多くの憶測で話をすすめていることをお断りしておきます。

◎顧客に対する『マーケティング』
メーカーを主なターゲットとし供給する製品・部品は「センサー、測定器等」などで、機能的な専門性が求められるものに特化して「コンサルティング」サービスをも付加するものです。顧客の「生産性を高めるために必要な高機能な機器・部品への『欲求』」「モノづくり機能はあるものの充分な知識を持たない『現実』」「機能することを求める『価値感』」を顧客以上に知悉して供給します。

求める前から求められる「効用」を用意できる営業は、競争できない状況を構築できるので価格設定において優位な「市場」が形成されます。
ただ、このシステムはほとんどマニュアル化されて行われているようで、成功事例をもとに横展開されているようです。顧客のニーズの効果的な読み取りも、マニュアルのなかにあるのでしょう。

◎従業員に対する『マーケティング』
特化した顧客に対しての『マーケティング』を実現できる人材の獲得がその焦点になります。
主たるインセンティブ(誘因)は、ずばり最高レベルの報酬です。一人当たりの報酬額については、トヨタ自動車のそれの2倍以上の金額です。

求めている人材は2分野で「機能」として秀でた人材です。最も「強み」としなければならないのは製品開発で、ここが欠けるとビジネス・モデルの基盤が形成されません。精密機器分野での報酬としては、世間水準を一頭地を抜き出ているのとドライな社風なので「することさえできれば、評価される。」ことにより安定しているようです。

もう一分野は営業マンで最適「機能」を発揮する人材が求められます。
中途採用はなく、色のついていない新入社員を自社のノウハウで鍛え上げることにより企業仕様に戦力化しています。
与えられた高い「ノルマ」を、決められた営業手法を繰り返すことでスキルが磨かれて勝ち抜くことで「機能戦士」になって行きます。
ついてこれない者は、とうぜん淘汰されて行きます。

人材を「機能」や「消耗品」として規定するとき「機能戦士」がくり出すべき「技」の編み出しと磨きをかけることは勝つための要件です。
これが合理的に実践されます。細かく「行動規範」として規定されて、上司・先輩の指導の下にロール・プレイング(役割演技)が行われより高い「成果」が実現されます。特化した高収益が望める「市場」で勝利するには「機能」を最高度に保つことが有効な戦略になるようです。

「機能」と規定して人材を活用とする場合は「高水準の報酬」と「マニュアル」があることが、体育会系の人材にとって「勝つという欲求が満たされる」こともあり有効なインセンティブ(誘因)になります。

ただこの従業員への「マーケティング」展開が有効なのは「競争が起こらない」「クリエイティビティ(創造性に富む)が求めれことが少ない」「高度な知識が競争の源泉でない」といった要件の「市場」でなければその「効果」は発揮しにくいでしょう。
一般的に「金銭的な動機づけ」は「活動を引き起こさせる」起爆剤になりますが、創造性や革新を引き起こす「やる気」を引き起こすことはありません。しかし「やる気」を引き起こす価値観にかかわる「動機付け要因」に「金銭的な動機づけ」が補償される時にはより「強化」されたものになるのは確かなようです。